25歳の指導者が"アルゼンチン"へ行って日本サッカーに挑戦状を叩きつける。(河内一馬)

河内一馬(カワウチカズマ)。東京都出身1992年生まれの25歳。

18歳で選手を引退し、サッカーの専門学校へ進学。在学中は社会人チームで2年・Jリーグの下部組織で1年間インターンシップをし、卒業後は高校サッカーのコーチを2年間務めた。その後世界のサッカーを見るために旅を始め、約15ヶ国、プロ・アマ問わず様々な現場でサッカーを学び帰国後、都内大学サッカー部のヘッドコーチを2シーズン務め、今に至りプロサッカー監督を目指している。

『なぜ日本サッカーには「若い監督」がたった一人として現れないのか?』

私はこの大きな「疑問」に、日本サッカーの現状が全て表れていると考えています。
これを解決するには若者自ら声を上げ、日本サッカーに挑まなければなりません。
日本サッカーの"空気"や"制度"そして"固定概念"全てを変える為にアルゼンチンへ行きます。

現代のサッカーでは、IT(データ)を駆使して戦うことが常識となってきました。 そのために、「経験」が長くない人間でも上にいける可能性が高まっています。その証拠が、ITサッカーで独自の理論を作り上げ、28歳で監督になったユリアン・ナーゲルスマン(ドイツ1部リーグ)ではないでしょうか。「経験がデータに置き換えられる時代」になったことは、良いか悪いかは別として事実だと思います。 情報を経験で蓄積していく時代とは違い、現代ではデータで手に入る分だけ能力を伸ばす速度も上がります。

また、今では日本にいても海外の情報がタイムラグなしで届く時代になりました。戦術や理論は(誤解を恐れずに言えば)日本でも学ぶことが可能です。つまり、昔よりも成長のスピードを上げられるのです。 昔のように資料に触れるまでに時間がかからない分、能力を伸ばす速度も上がります。常に海外のサッカーを身近に感じられる時代がやってきたのです。

加えて、「英語」や「スペイン語」が扱えるようになった指導者は、それだけで情報量に雲泥の差が出てきます。日本語でしか情報を得ることが出来ない場合はその分成長スピードが下がりますが、逆もまた然りです。 今では海外でサッカーを学んでいる指導者が少しづつ増えてきていますが、現時点で既に日本のトップトップも知らない情報を持っている若い指導者は大勢います(情報がすべてではないことを前提にしても)。

現代では時代の変化や様々な文化の発展によって、若い人間が頭角を表す可能性が大きくなっています。というより、情報や手段がなかった時代と比べて「成長速度」が同じということは到底考えづらく、もし若者が世に出てこないのであれば、それはなんらかの「構造的問題」があるとしか考えようがありません。

「若い=能力が低い 」という時代はとうに終わっています。
育っていないのではなく、使えていないだけなのです。

私はプロジェクトを通して【Jリーグ監督就任に必要な条件】を変えていくためのアクションをいくつか起こしていきます。
つまり【Jリーグ監督就任に必要な条件】が、これまで日本サッカーに「若い監督」= 新しいリーダーが1人として頭角を現さないたった一つの原因です。

①S級ライセンス保持者

まず私のように「Jリーグで監督をしたい」と思った指導者は、S級ライセンスの取得を目指すという流れが普通です。
しかし、S級ライセンスを取得するには多くの「お金」と「人脈」と「時間」を必要とし、決して若い人間が取得できるような条件ではありません(現在の最年少取得者は36歳)。それに魅力を感じない指導者が、協会とは違う方法や考え方で「選手育成」をしている、という現状が日本サッカーにはあります。これはおそらく誰にも否定できない事実です。
以上のような状況であると知った私は、その道を通ることをしませんでした。図にあるように多くの問題に波及し、土俵に立つまでに時間がかかるのであれば、その間に野心が失われ、世界の監督には一生かかっても敵わないと思ったからです。

②S級ライセンスと同等以上の資格保持者

残された道はもう一つの条件しかありませんので、自然と「海外で修行を積み、海外の監督ライセンスを取得する」という発想が出てきました。
しかし現状日本では、"S級ライセンスと同等以上の資格"という部分がグレーのままで明確に定義されていません。
そのため過去に海外のプロ監督ライセンスのみ(日本人)でJリーグの監督に就任した例がありません。

これが
「日本人指導者が海外に出ない理由」であり
「日本人指導者が海外から帰国しない理由」です。

これによって現状日本では、海外に出て学ぶことに対して後ろ向きな傾向があり、さらには海外で経験を積んだ指導者が日本サッカーの発展の力になることが難しいという奇妙な状況が生まれています。
ある種 "分離した状態" で活動をせざるを得ないので、メディアで海外の知識を発信するのが限界です。

海外で修行を積んだ指導者は、再びお金と時間をかけ、コネを作り直し、日本のS級ライセンスを取得し直さなければならないジレンマがあります。
ただでさえ小国・島国で、欧米や南米と地理的・言語的に離れている日本にとっては致命的な状況です。

「指導者が海外に学びに行き、その指導者が日本に帰国する」という循環が生まれないので、いつまで経っても世界に追いつくことはありません。

日本人監督の場合。例えばアルゼンチンでは、最速2年でプロライセンスが取得可能で、FIFA(国際サッカー連盟)加盟国で5年間監督経験を積めば、UEFA(欧州サッカー連盟)加盟国で監督をすることが可能。

私はこの状況を変える為にプロジェクトを実行します。

私は日本サッカーの現状(実力のある若い監督が頭角を現すことができない現状)を変えるには「3つの条件」が必要だと思っています。

【①議論の活発化】が起きていない状態、つまり世論を伴わず、メディアにも取り上げられず水面下でアクションを起こしても恐らく何の変化も起きません。これまで同じような問題提議があったかもしれませんが【②監督としての結果】を伴った人物が見直しに向けてアクションを起こした例がないので、誰も動き出そうとはしません。「供にJリーグで戦いたい」という意思のある【③クラブからの後押し】がなければ、到底日本サッカーという大きな相手に挑むことはできません。
この「3つの条件」を満たすためには、まずアルゼンチンへ行かなけばなりません。

2018年2月22日
日本を出発しアルゼンチンで3年間を過ごします。
アルゼンチンに滞在する3年間でサッカーを学び(そのうちの2年間でプロ監督ライセンスを取得)、帰国します。
その3年間では、メディアと手を組み、発信を続け、議論を活発にします。
同時にセルフブランディング・マネタイズを行い、帰国後JFLクラブの監督に就任可能な状況を作ります。
JFLで結果を出し、尚且つFIFA公認のプロライセンスを持っている監督が、クラブと供にJ3に昇格する際に見直しへアプローチをするのが、最適かつ唯一の方法だと考えているからです。

もし前述した「3つの条件」が全て揃い、このプロジェクトが成功した場合、
以下のような段階を踏んでいくことが予想されます。
1つでも前例が生まれれば、必ず状況は動き出します。
同時に、既存の海外ライセンス保持者が日本国内で監督を目指す動きが出始めると思います。

そうなった場合、Jリーグの監督になるために(土俵に立つために)、S級ライセンスを取得することが"絶対条件"ではなくなります。
そこで初めて「監督養成制度を見直さなければならない理由」が出来、日本サッカーが動き出します。

今変わらないのは「変えた方がいいかもしれないけど変えなくてもいい」状況だから変わらないわけであって、それであれば私たちがアクションを起こして「変わらなければならない理由」を作り出すしかありません。
欧米や南米のように、若い指導者でも取得できるようなS級ライセンスになれば、Jリーグが監督を育てる場としても機能し始め、自然と日本人監督(リーダー)は育ち、次から次へと野心を持った若い監督が出てきます。

サッカー界に限らず、日本社会では「長い下積み」が美徳とされる傾向があります。世界が「下積み」の時間を減らし、その分の時間を「イノベーション」を起こす為に使っていることに、日本人は気付いていません。

サッカー界で言えば、「コーチ」と「監督」は別の育て方をしなければならないと思っています。
「監督」を目指している指導者が「コーチ」として長い下積みすることは、必ずしも必要なことだとは思いません。

世界を変えてきた起業家が必ず社員を経験しているわけではないのと同じで、監督を育てるには早くから監督としての経験を積ませることの方が圧倒的に重要で、そのためにはそれが可能な土壌を日本サッカー界全体で作っていくべきです。
日本人にとって、優秀なコーチになることは難しくはありません。
しかし、未来を変えるほどのカリスマ性を持った「監督=リーダー」は、日本という文化的特徴のある国で自然に生まれることはないです。日本のサッカーがより発展するため、そして「世界で勝つ」ために育てなければならないのはコーチではなく監督です。
優秀な監督を5年で現場に出せるのか、それとも10年かかってしまうのかは、サッカーの発展にとって死活問題になりえます。

それらを踏まえて、現在のJリーグ監督の現状を把握していただきたいと思います。
2014?2018年(5年間)シーズンスタート時における【J1リーグ監督平均年齢(最年少)】です。
これを見ると、J1リーグ(5年間)において監督の平均年齢が46歳を超えていることがわかります。
さらにJ1リーグでは5年間、シーズンスタート時に30代で起用されたの監督が「0人」という事実も見えてきます。

W杯過去5大会(2018年6回目予定)の日本代表監督を見てみると、岡田武史さん以外は全て「外国人監督」であることがわかります。またアギーレ監督解任後の監督候補者に日本人が「0人」であったことは、記憶に残っている方もいるのではないでしょうか?
この時、日本のS級ライセンス保持者は400人を超えています。

一方、世界の現状はどうでしょうか?
欧米・南米の国々では、選手の育成以上に、監督=リーダー養成に力を注いでいます。
2016年、ブンデスリーガ(ドイツ1部)に所属する「TSG1899ホッフェンハイム」の監督に、当時28歳のユリアン・ナーゲルスマンが就任したことは大きな話題になりました。彼は、ITを駆使した独自のサッカー理論を展開し、2016-17シーズンは数ある強豪を抑え、リーグ4位という成績を残しています。

彼を筆頭に、2017年におけるブンデスリーガでは、シャルケの監督を務めるドメニコ・テデスコ(32歳)など、6人もの監督が30代での就任でした。
イングランド1部リーグでは、当時31歳のエディ・ハウが「ボーンマス」の監督に就任し、アルゼンチンで1部リーグでは当時27歳のルイス・スベルディアが「CAラヌース」の監督に就任、彼はその後リーガ・エスパニョーラ(スペイン1部リーグ)所属の「デポルティーボ・アラベス」の監督に就任しました(当時36歳)。ポルトガル人のビラス・ボアスがポルトでリーグ制覇をしたのが33歳、その翌シーズンにはイングランドの名門チェルシーの監督に就任しています。
これは氷山の一角に過ぎません。欧米や南米では、これまで多くの30代・20代監督がトップリーグで起用され、計画的な監督(指導者)=リーダー養成が行われています。

また、W杯の歴史を見てみると、過去20大会におけるすべての優勝国の監督は「自国出身」であるという事実があります。他国出身の監督がW杯で優勝をした例は一度もありません。
直近7大会のデータを見てみると、ベスト16に進出した国の72.3%が自国監督、ベスト8に進出した国では78.6%、ベスト4になると90%を超える国が自国監督。優勝だけでなく、これまで決勝戦を戦った他国出身の監督は0人です。サッカー強豪国である、ブラジル、アルゼンチン、ドイツ、スペイン、イタリアなどの国々は、過去に他国出身の監督を招いたことは1度もありません。
※参照:http://www.huffingtonpost.jp/2014/04/24/worldcup-data_n_5203268.html

世界では監督としての現場を多く経験した監督=リーダーが育っているため、たとえウルグアイの様な小国(人口は静岡県とほぼ同じ)でも、W杯という舞台で自国の監督を起用することは至極当然なのです。

「なぜアルゼンチンでなければならないのか?」

そこには"10の理由"があります。様々な要素が絡み合った理由や意図があり、ここで書くには文字数が多くなりすぎてしまうので、『KazumaKawauchi.com』にて随時更新予定です。ご興味のある方はご覧ください。

ただ、ご存知のようにアルゼンチンという国では、これまで数々の名選手や名監督が生まれてきました。
アルゼンチンから日本が学ばなくてはならないことは多くあるはずですが、それらの情報は欧米諸国の情報に比べると、まだまだ日本に入ってきていません。それを伝えるだけでも価値のあることだと思っています。
今の日本サッカーに足りないものが、アルゼンチンにはあります。